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緑化センターについて

緑化樹木の樹勢回復技術(診断編

 

倒木危険度判定

この調査は、人々の生活の場に存在する街路樹や公園樹、庭園樹の倒木による危険度を把握し、今後どのように取り扱ったらよいかを判断します。危険度判定は外観調査と精密調査の2通りの方法があります。

外観調査

この調査では、次のような項目を調べます。

樹幹の傾斜、風当たりの強弱、根元での工事、腐朽病害、亀裂、根の腐れなど、倒木や枝折れに直接結びつく項目を丁寧に診断します。

 

外観調査

  1. 歩行者・建物との位置
  2. 根返り
  3. 幹折れ
  4. 大枝折れ
  5. 中小枝落下
  6. 幹の傾斜

根返り

樹木の根株が腐り自分の体を支えられず、強風が吹いた時に倒れます。これは根株腐朽菌の侵入や地下水位の高いことが原因で起きます。やっかいなことに、根株腐朽の被害は倒れてはじめて分かることが多いのです。

その早期発見は、樹木医の課題です。

大枝折れ

この大枝はほとんど枯れています。いつ落下してきてもおかしくありません。

根返り

根返り

根返り

大枝枯れ


幹の傾斜

幹の傾斜

幹の傾斜

幹が傾斜するのは、被圧により光の方へ曲がることや、台風・大雪、工事などによる根の切断が原因です。樹木は立て直そうとして上方へ湾曲します。幹の表面には、高い凹凸、シワ、コブなどが現れます。やがて根が弱ると、樹木は倒れてしまいます。

木槌による打診

幹や大枝内部の腐朽状態を的確にとらえる便利な方法が、木槌による打診です。健全な音は、水分を含んでいて、やや鈍いくぐもった音がします。弱っている音は、水分が抜け、軽く響く音です。

 

木槌による打診

危険度の評価

危険度の評価

危険度の評価は、各項目について危険度を「安全」から「明らかに危険」まで、4段階で評価します。

 

危険度の評価

  1. 安全
  2. 危険の可能性がある
  3. 危険の可能性が高い
  4. 明らかに危険

このように木観調査は、調査する6項目の合計点数が高いほど、危険度も増しています。

精密調査

この調査は、レジストグラフやインパルスハンマーなどの機器を用いて内部の材の状態を評価します。これらの機器は、十分な外観調査を行った結果、問題ありと判定された樹木の腐朽や空洞部の程度を推定するために使います。機器を使用すると、わずかですが樹木を傷つけてしまうことにも留意しましょう。

インパルスハンマー

この機器は、幹の両側にねじ込んだプローブと呼ばれる金属ネジの一方をハンマーでたたき、その振動波が材部を伝わって、反対側のプローブに達するまでの伝達速度を測る機械です。

 

インパルスハンマー


内部に腐朽や空洞がある場合、振動波は、材部を直線上で進めずに迂回するので、余計な時間がかかります。つまり、内部に材の欠陥があると低い値となり、欠陥がないと高い値となります。代表的な樹木について、健康な樹木の伝達速度がわかっています。これらを参考に、樹幹内部の腐朽や空洞の有無を推定することができます。

レジストグラフ

レジストグラフ測定

この機器は、樹木内部の深刻な腐朽や空洞の大きさを測定します。刃先が3mmの細いキリを樹幹に回転させながら貫入し、そのとき錐にかかる抵抗力の大小が、ペーパー上に波形グラフとして記録されます。樹木が健全な状態にあれば、グラフは左肩上がりの鋸歯状波形として表示されます。

下図左の抵抗波形Aのデータのように、波形が途中でU字型に下がる場合には、その位置に空洞や腐朽などがあります。Bのデータのように、V字型に下がれば亀裂があるものと考えられます。

下図右側、測定方向に示すように、通常4方向から計測し、腐朽の部位、形、大きさを推定します。

空洞率が50%以上あるいは、開口空洞の角度が120度以上の場合に、樹木を伐採する目安としています。幹ばかりでなく、大枝も異常があれば計測します。錐の長さは30から50cmの3種類あります。両側から貫入する場合、おおむね直径60から100cm程度までの太さの樹木を計測できます。

 

レジストグラフ

 

総合診断
総合診断

観察により明らかになったことをまとめます。

現地で観察したことは、できるだけ詳しく記録しておくことが大切です。

 

総合診断

  1. 周辺環境の影響
  2. 根系・根元土壌の状況
  3. 大枝・幹の状況
  4. 樹冠・枝葉の状況
  5. その他
  6. 考察
  7. 総合判定

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周辺環境の影響から総合判定まで、7項目について整理していきます。

総合判定は、地上部の衰退度判定による衰退度区分などを参考として、分析・検討したことを記載します。

周辺環境の整備から保全計画まで、必要な図表を作成し添付します。

以上の取りまとめを行って、ようやく樹勢回復を目的とする樹木の診断が完了します。

 

樹木は何も語らず、その場所を移動することもできません。暑い夏も寒い冬も、どっしりと腰を落ち着けています。

その樹木から、私達は計り知れない恩恵を受けています。

衰えた樹木が発するシグナルを、樹木医は的確にとらえ、正しい診断を下すことにより、樹木に取り囲まれた快適な生活環境を維持することができます。

 

ここで解説した樹木の診断技術は、当センターで作成した「樹木診断様式」、「緑化樹木の樹勢回復技術−診断・治療編」(DVD)など、いくつかの資料にもとづいています。

グリーン・エージ掲載記事

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