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緑化樹木供給・技術情報

価格情報<平成23年度版>

トピックス・ マツ類救出計画

 

ホワイトバークパイン

ホワイトバーク・パインは亜高山帯生態系に必須な生命

出典 : Whitebark Pine AN ECOSYSTEM IN PERIL,

      SPRING 2010, AMERICAN FORESTS

米国森林局、米国魚類・野生生物局、国立公園局の3組織は、各々の資源を応分に負担してイエローストーン国立公園と周辺地域にあるホワイトバーク・パインを保護する計画を展開している。昨年、アメリカン・フォレストが特別レポートで強調したように、ホワイトバーク・パインは山頂部生態系における鍵を握る要素である。種子はグリズリーベアのダイエットにとって非常に重要な構成要素であり、種子は繁殖のためにハイイロホシガラスによって効率的に運ばれ散布されることに強く依存する。これらの樹木は、近年山岳性のマツ類甲虫の蔓延と発疹サビ病の2重の脅威の餌食となり枯れている。

多くの組織や部局がホワイトバーク・パインに戦う機会を与えるために活動を続け、樹木が危機を脱したと宣言する前にやるべきことが多くある。拡大イエローストーン調整委員会として機能する連邦部局は、サビ病抵抗性苗の生産と山火事防止措置を一段と強めることを要求する計画を提案した。その3ヶ年計画は、甲虫が樹木に蔓延しないよう甲虫のフェロモンを模倣する天然の有機合成物ベルベノンを用いること、病気が広がるのを防ぐために発疹サビ病に罹った樹木の枝をまず剪定することである。

ホワイトバーク・パイン(Pinus albicaulis)は、5葉の種で、ほとんど高木限界に近い所で見られる。若齢木はその名前のように、ホワイトバークとして知られる。樹木は小さな林に生育し、樹冠は灌木状となり、樹木自体はしばしば、節くれ立ったざらざらした外見となり、高標高地で育つ。

ハイイロホシガラスはホワイトバークの球果から種子を引き出すことに熟達しており、栄養価の高い種子80〜100粒をため込むことのできる咽袋に貯蔵する。鳥たちはあたかもガーデニングを始めるかのように種子をまき散らす。すなわち鳥たちは100ヤード(約90m)から1マイル(約1.6km)ないしそれ以上飛び、そこへ何粒かの種子を地中1インチ程の深さに埋める。

生物学者たちによると、1羽のハイイロホシガラスは一生の内に98,000粒ほどを異なる30,000ヶ所あまりに貯蔵すると言われる。種子のおよそ半分は、成鳥の餌か若鳥の栄養分のどちらかとして掘り出される。残りは、素早く安定した直根を伸ばす丈夫な実生となるよう発芽する機会と最も極寒の気温、衰弱させる強風、強烈な太陽光輻射から生き残る能力を持つ。

そのうちに、これらホワイトバークの実生はエンゲルマントウヒのような実生に必要な日陰をもたらす林を形成する。やがて、エンゲルマントウヒが成熟すると、その他の高標高地に適応する種が成立するようになる。何年にもわたり、日の当たる、高木限界に近い空地で、かつて疎らに点在した先駆種のホワイトバーク・パインの島は、ワピチ、クマ、ムース、アカリス、様々な鳴鳥に好まれる複雑な下層植生を伴う密な森林へ形を変える。高標高地で樹冠を広げ、成熟しながら、植物や動物の複雑さを増すことから微気候を創り出す。

 

ホワイトバークパイン

ホワイトバーク・パインの生育域

カナディアン・ロッキー、ノースカスケードからイエローストーンまで、樹林地帯のおよそ98%は国有林、国立公園、州地域、インディアン居留地、国立原生地域である(出典:同上)

ホワイトバーク・パインの林は、風を遮り、急な融雪を妨げる。これがエロージョンを防ぎ、夏の間中、山間部の渓流を涵養する一定した冷たい水の源となる。マス漁師たちの中には、マスが必要とする真夏の渓流の水質を保全するこれらマツの役割から利益を得ているものがいる。良好なマスのハビタットを喪失することは、グリズリーベアの幸福から地域経済の領域までの山岳生活に影響を及ぼす。

ナチュラリストであるJohn Muirは世界の頂点で生育するこれらの樹木を愛した。Muirはかつて樹高3フィート(約90cm)足らずのホワイトバーク・パインの年輪を数えたところ255本と報告した。もう一本の3フィートクラスについても、彼は426本の年輪から成っていたと語った。

ホワイトバークの種子は、冬眠に重要な最良の栄養源である。グリズリーは、雪の下でさえ、リスが隠しておく場所を突き止める専門家である。大きな熊が注意深く種子を球果からつまみ出す様は、ほとんど子どもがピーナッツとかヒマワリの種子を殻から取り出すのと同じようだ。ホワイトバークの種子は、この希少なカリスマ的捕食者に対する生命の贈り物であり、また種子の豊かな栄養から利益を受けるアカリス、ホシガラスおよびその他の生き物にとっても同じである。

多くの樹木は500年以上の寿命があり、何本かの個体は1,200年の時を刻む。ホワイトバークは、20〜30年で性成熟に達する。

今年になって、カナダからカリフォルニアにかけての山脈に群生しているホワイトバーク・パイン樹林の77%程は、ホワイト・パイン発疹さび病と山岳性マツ類甲虫の蔓延に圧倒されている。

本種を救うために働いている科学者たちは、回復措置は緊急かつ広大なものとなることに同意している。発疹さび病はヨーロッパからの侵入病害で、樹木は自然防御力を獲得するまでの進化する時間を持ち得ていない。マツ類甲虫は在来種で、大発生は北米の森林の歴史を通じてこれまで一般的に起こっている。

幸いなことに、関係部局、AMERICAN FORESTSのようなNPO、ホワイトバーク・パイン生態系財団は、一層の植樹活動を擁護し、支援している。AMERICAN FORESTSは、ホワイトバーク・パイン樹林を修復する措置を進めるため、実生の植栽について州、連邦部局と提携している。Diana Tomback博士の指揮下でホワイトバーク・パイン生態系財団は、ホワイトバーク・パイン計画に対する財政支援の提供と同様に保護教育に取り組んでいる。グループは修復に必要な新たな戦略を促進することを期待し、ホワイトバーク・パイン保存のための連携体制を構築する。

タイミングと財源が危機的状態である、と支援者は語る。しかし、大部分は代替的な措置、わずかな幸運によって、ホワイトバーク・パインが景観のシンボルとして生き残ることができると信じている。

 

  出典: 1)Forestbytes(June 2011):AMERICAN FORESTS
    2)Whitebark Pine AN ECOSYSTEM IN PERIL(SPRING 2010):AMERICAN FORESTS

 

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