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第11回 松枯れ防除実践講座のご報告 鳥取県

当日のプログラム等はこちら

 

マツ材線虫病診断キットの使用手順の解説

当センターでは、平成17年度より松枯れ防除事業に携わる都道府県の松枯れ防除担当者や、実際に現場で防除事業を行う松保護士や森林組合職員などを対象として、松枯れ被害対策にかかる適切な防除計画の策定と、適正な防除の推進に必要な技術・知識の習得を目的として、年に一回、全国輪番制で「松枯れ防除実践講座」を実施している。

 

本講座の受講により、防除関係者の間で新たな人脈が築かれたり、事業発注者と受注者、あるいは薬剤メーカーと施工者の意見交換の場としても一定の効果をあげているほか、都道府県の松枯れ被害に対する取組の内外へのPR効果も、本講座の狙いとするところである。

 

11回目となる平成27年度は、9月10日(木)〜11日(金)の2日間の日程で、鳥取県にて林野庁、鳥取県、鳥取大学、鳥取市の後援により開催し、都道府県市町村の防除担当者のほか、全国の松保護士や樹木医、森林組合職員、有識者、学生など、総勢80名の皆様に参加いただいた。

 

報告の詳細はこちら(PDF)

 

以下は報告の抜粋

 

1日目 座学(鳥取大学鳥取キャンパス1号館大講義室)

1日目は当センターからの開会の辞に続き、来賓として近畿中国森林管理局計画保全部長の馬場敏郎氏、鳥取大学農学部教授の山本福壽先生、鳥取県農林水産部森林・林業振興局長の尾崎史明氏よりご挨拶をいただいた後、4人の先生による講義が行われた。

 

○鳥取県農林水産部森林・林業振興局森林づくり推進課 課長補佐 三島昇氏

「鳥取県における松くい虫防除対策の取り組み」

 

鳥取県下の針葉樹の4分の1はマツであること、マツが鳥取砂丘周辺の景勝地の形成に重要な役割を果たしていること、平成16年度より特別防除を縮小し、駆除を中心とした事業に切り替えたことなどを説明された。

 

県内全域のマツ全てを保全することは困難なことから、防除の対象とする保全マツ林を定め、対象地を限定して特別防除を実施せざるをえないこと、防災ヘリを活用した駆除対象木の正確な位置の特定や被害材の有効利用のほか、樹種転換や海岸マツ林をボランティアと共に守り育てる「白砂青松アダプトプログラム」の立ち上げや、「とっとりパワー松」といった抵抗性マツの育種事業に力を注いでいる点が紹介された。

 

○石川県農林総合研究センター 林業試験場森林環境部長 千木容氏

「石川県の松枯れ被害対策と抵抗性マツの育種について」

 

全国的に薬剤散布の実施が減少傾向にあり、石川県でも例外ではないこと、代替策としての樹幹注入も施工する地域の気候条件等によって様々な工夫が必要であること、抵抗性品種の開発にも様々な課題があることなどの説明がなされた。

 

特に石川県における樹幹注入の施工は、施工適期である1〜2月に石川県では晴天日が極めて少ないので、試行錯誤を繰り返し、施工可能な天候条件や実施時期の再検討を行っている点や、注入から薬剤が十分拡散するまでの実証試験の結果のほか、防除技術者の育成による事業の推進と共に、環境教育を通して樹幹注入の施工を子供たちにも体験してもらう取り組みなどが紹介された。

 

樹幹注入一つをとっても、地域により様々な試験・研究やモニタリングをしないと効果的な実施方法を把握することができないことは、樹幹注入の主要メーカーにとっては大きな課題と言え、天候条件や施工時期は地域によって一律ではなく、その点のメーカー側のさらなる研究やサポートが必要であることが示唆された。

 

○神戸大学大学院農学研究科教授 黒田慶子先生

特別講演1「松枯れの現状と対策〜関西地域の特徴について〜」


マツ材線虫病の発病機構として現時点で解明されている事項や、松枯れのメカニズムを正しく理解することの重要性、そしてそれを正しく伝えることの難しさ、さらには、マツ枯れ増加の背景や、今後のマツの取り扱いを解説された。

 

実例を挙げながらの報告の節々に、これまで黒田先生の経験された切実な問題点が提起されており、松枯れ被害対策の難しさや、落ち葉掻きや炭の施用、菌根菌などが材線虫病の予防に有効であるとする一部の学識経験者や一般市民の誤解や思い込み、行政担当者の勉強不足などに警鐘を鳴らす内容であった。

 

特に松枯れ対策は口で言うほど簡単ではなく、そのための松林の現況把握のほか、人手、予算など、それ相応の心構えなしには途中で必ず頓挫してしまうことなどを訴えられた。

 

○千葉大学名誉教授 本山直樹先生

特別講演2「松枯れのより完全な防除について」

 

全国的な薬剤散布の減少や、名称各所の松枯れの発端がマツ材線虫病の認識不足や、地域住民の稚拙な思い込みや防除薬剤の誤った理解によるものであること、そして、より完全な防除には何が必要かを、その時々の膨大なデータに基づき解説された。


特に、島根県出雲市を例にあげ、信頼に足るメディアが一部の学識経験者の意見のみを鵜呑みにした結果、時として途方もない誤解を広める装置として機能してしまう恐ろしさを訴えた。

 

松枯れ防除対策は、予防散布と伐倒駆除の両方が不可欠であり、防除事業の実施主体としては、科学的根拠のない健康被害や脅迫には決して屈しないことはもちろん、地元住民自身の「地域の松を絶対に守る」といった強い熱意がなければなし得ないこと、松林の分布は行政単位でマツ林が分布しているわけではないので、所有者や行政主体共に、地域を越えた連携が必要であることを強調された。

 

2日目 鳥取大学乾燥地研究センター・乾燥地研究センター合同ゼミ・多目的室

主に実習を主体としたプログラムで実施された。

  • 部分的に松枯れが発生している松林内の見学実習
  • 松枯れ被害木の見分け方のポイントについて説明
  • 小田式松脂滲出調査(ヤニチェック)の実習
  • カミキリが残したさまざまな痕跡の観察
  • 各メーカーの松枯れおよびナラ枯れ防除薬剤の商品説明と実演を見学(伐倒くん蒸処理、土壌灌注処理、樹幹注入処理、天敵微生物害虫防除剤(ボーベリア・バシアーナ菌)の商品説明と実演、ナラ枯れ防除薬剤の樹幹注入処理)
  • マツノザイセンチュウの検鏡観察実習(ベールマン法の実施要領の説明を含む)
  • 根系共生菌の観察実習(外生菌根菌の採取・観察の方法、外生菌根菌のマツの根への形成を促す懸濁液の作り方とその施用方法など)
  • マツ材線虫病診断キットの使用手順

 

カミキリが残したさまざまな痕跡の説明の様子

カミキリが残したさまざまな痕跡の説明の様子

被害材から見つかったマツノマダラカミキリの幼虫

被害材から見つかったマツノマダラカミキリの幼虫


土壌灌注処理のようす

土壌灌注処理のようす

天敵微生物害虫防除剤の施工のようす

天敵微生物害虫防除剤の施工のようす


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