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NGK・GGG共同主催 平成27年度「ゴルフ場の樹木管理セミナー」東日本地区 報告

平成28年2月26日(金)、八王子市にある八王子カントリークラブを会場として、一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(NGK)および公益社団法人ゴルフ緑化促進会(GGG)の共催による「ゴルフ場の樹木管理セミナー」が開催されました。

 

このセミナーは、ゴルフ場の経営者、支配人、グリーンキーパーの皆様にゴルフ場の緑地機能を高めるための適切な樹木管理への理解を深めていただくことを意図したものです。今回は新たな樹木の導入、設計者の考えるゴルフ場の樹木、マツ枯れ防除について理論を学び、マツ枯れの防除方法などを実習していただきました。


公益社団法人ゴルフ緑化促進会 副理事長 桜井尚武 氏による開会の挨拶では、

「オリンピック競技種目にゴルフが採択され、国民スポーツとしての評価が定着している。ゴルフは適度な運動となり、日光を適度に浴びる良好な屋外活動である。しかもいろいろな人たちが普通に楽しめ、訪れやすい場所となっている。

GGGはゴルフ場造成が自然破壊と言われた時代に、ゴルフをするお返しに1プレーから50円を緑化に寄付していただき、そのお金を緑化に使うことをめざして創られた団体である。

公益社団法人としてゴルフを通じて人々と地域の環境づくりに貢献するもので、東日本大震災後の三陸の被災地にサクラを植栽し再生を図ることや、本日のセミナーを通してゴルフ場の樹木管理に関わる情報を発信するなど、十分に役割を発揮していると考えている。

このセミナーの特色は、勉強することはもとより、実際にマツ材線虫病被害を回避する方法、緑をどのように管理するかの実習を伴っていることである。緑に関わるご質問は当会、日本緑化センターへご質問ください」と述べられました。


来賓の八王子カントリークラブ・橋本代表取締役の代理として支配人 佐々木 進一 氏からは、

「当クラブは昭和35年に開設し56年目を迎える。自然の地形を生かしたコースレイアウトの中で時を重ね樹木が豊かに育っている。

ゴルフ場はCO2を固定し、酸素を発散し、周辺の気温を下げる働きをする。

2011年9月の台風では、最大瞬間風速43mの暴風により200本以上の樹木が倒れた。マツ枯れ被害も毎年100本前後発生している。これらの被害木はコンポスト化してコースの土壌改良に還元している。

50年を経過した樹木の間伐を今後5年間で進めることとし、マツの代わりに何を植えるかを含め、このようなセミナーの機会に皆様と共に学んでいきたい」とご挨拶がありました。

 

公益社団法人ゴルフ緑化促進会 桜井副理事長

公益社団法人ゴルフ緑化促進会 桜井副理事長

八王子カントリークラブ 佐々木支配人

八王子カントリークラブ 佐々木支配人


 

座学の最初の講義は「新たな樹木の導入によるゴルフ場の管理」について、濱野周泰氏(東京農業大学造園科学科教授)から、「樹木の導入には」、「緑を造成するための要件」、「林帯づくりと植栽の要点」「既存マツ林への広葉樹の植栽」「樹木管理と樹林の育成」をわかりやすく解説していただき、育てる緑、まもる緑、抑制する緑という植える目的を明らかにすることを強調されました。


2番目の講義は「ゴルフコース設計者から見たゴルフ場の樹木管理」について、佐藤謙太郎氏(株式会社M&K代表取締役)から、「ゴルフ場における樹木の重要性」、「ゴルフ場の樹木配置のポイント」、「樹木による戦略性と景観形成」、「適正な樹木管理」を平易に説明していただきました。

落葉樹と常緑樹、高木と中木、立木密度、花木の配置などバランスが樹木の配置において重要であり、変化と戦略性をあわせ持つ林帯ライン、グリーンへの朝日、風通しを良好にすること、落ち葉の影響を少なくする落葉樹の配置を考えることが望ましいコース設計となる。

何よりも、いかにコース委員会、理事会に樹木の剪定・間伐の効果を理解してもらい、予算を認めてもらうかが重要、と指摘されました。

 

3番目は、「ゴルフ場を想定した松くい虫被害対策」をテーマに、中村克典氏(森林総合研究所東北支所生物被害研究グループ長)から、「松くい虫被害とその防除手法」、「ゴルフ場のマツの松くい虫対策」、「常識的な防除を着実に」という構成による解説をしていただきました。

最近試みた天敵微生物製剤の効率的な防除方法なども紹介され、松くい虫被害対策において大切なことは、先例のない取組や画期的な新技術をあれこれ試すことではなく、常識的な防除手法を着実に実施すること、これを「当たり前のこと」にしているのは、実務担当者の方々の正確な知識に基づく的確・冷静な判断と高度な技術レベルなのである、と結ばれました。

 

3講義通した13時20分まで長時間の座学となりました。

 

東日本地区の座学風景

座学会場全景

東京農業大学 濱野教授

東京農業大学 濱野教授


(株) M&K 佐藤代表取締役

(株) M&K 佐藤代表取締役

(研)森林総合研究所東北支所 中村グループ長

(研)森林総合研究所東北支所 中村グループ長


 

実習会場全景

実習会場全景

クラブ食堂での遅い昼食の後、クラブハウスから9番ホールの敷地境界に近い実習場所へ移動し、参加者は4グループに分かれ、各々20分程度で4種類の実習メニューを同時進行で進めました。

 

(1)伐倒くん蒸(薬剤)

(2)樹幹注入(マツ枯れ予防)

(3)樹幹注入(広葉樹害虫予防)

(4)土壌灌注(マツ枯れ予防)

マツノマダラカミキリ駆除の伐倒くん蒸

マツノマダラカミキリ駆除の伐倒くん蒸
(協力:サンケイ化学)

マツ枯れ予防の樹幹注入

マツ枯れ予防の樹幹注入

(協力:理研グリーン)


マツ枯れ予防の土壌灌注

マツ枯れ予防の土壌灌注

(協力:石原バイオサイエンス)

広葉樹害虫駆除の樹幹注入

広葉樹害虫駆除の樹幹注入
(協力:サンケイ化学、エムシー緑化)


 

一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会 大石順一専務理事

一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会 大石専務理事

実習終了後、再び座学会場へ戻り、一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会 大石専務理事より八王子カントリークラブの「緑化資源“堆肥化プラント”の取組」についてのご紹介と閉会のご挨拶をいただきました。


剪定枝、伐採木、刈草を径50o以下に一次破砕、最終的に4.5o以下まで破砕を繰り返し、戻し堆肥、攪拌、切り返し、熟成の工程を経て完成した堆肥は、土壌改良を目的にフェアウェイ等に全量散布している。

この効果は、(1)植物系廃棄物の処分費用の削減、(2)土壌改良によりサッチ(枯れて腐った葉)の発生減少、(3)農薬・化学肥料の使用量の削減、(4)目砂に使う砂を堆肥で代替、(5)とくに夏季の乾燥に耐えられ散水量の削減として現れている。
バイオマス利用の試みは、ゴルフ場の経営改善、プレイアビリティの向上、そして地域経済へ波及する可能性を持つことから、次年度以降のセミナーでは積極的に取り上げて実践に繋げていきたい、と話されました。


今回のセミナーには東日本地区から76名(関係者を除く)が参加し、午後4時まで熱心に研修されました。


実習の実施にあたり、サンケイ化学(株)(株)エムシー緑化(株)理研グリーン石原バイオサイエンス(株)の各社より資材提供と専門職員の派遣にご協力をいただきました。

なお、当センターは、本セミナーの企画・運営に協力致しました。

 

リンク 平成27年度 東日本地区の開催案内とプログラム

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