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NGK・GGG共同主催 平成26年度「ゴルフ場の樹木管理セミナー」東日本地区 報告

平成26年12月1日(月)、日高市にある日高カントリークラブを会場として、一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会(NGK)及び公益社団法人ゴルフ緑化促進会(GGG)の共催による「ゴルフ場の樹木管理セミナー」が開催されました。

 

このセミナーは平成23年度より当面5年間実施するもので、ゴルフ場の経営者、支配人、グリーンキーパー、樹木医、松保護士等の皆様にゴルフ場の緑地機能を高めるための適切な樹木管理への理解を深めていただくことを意図したものです。

 

今回は広葉樹の管理、剪定枝等のリサイクル、マツ枯れ防除について理論を学び、マツ枯れの防除方法を実習していただきました。

 

GGG桜井副理事長による開会の挨拶では、「日高CCなど昭和30年代後半に開場したゴルフ場では樹木が大きく成長し、地域の緑地、環境財産として認められている。一方で、マツ枯れ被害も依然深刻であり、樹木管理への情報提供が求められている。配布した資料『生きものの里山をめざすゴルフ場ガイドライン(GGG発刊)』は、ゴルフ場が里山の役割を担い、希少種などを再生する力をさらに発揮させることを意図して作成した。地域の社会財産として、さまざまな生きものの営みをゴルフ場が支えていることを大きな声で社会に伝えることが大切である。地域の人たちに愛される里山のような存在にしていきたい、そのためにも、樹木の健全な管理を通してゴルフ場の環境を整えることが大切である」ことを力説されました。


来賓の日高カントリークラブ・高橋代表取締役からは、「開場から今年で54年目に入り、ターフや剪定枝のコンポスト化による場内利用、ソーラー発電などのエネルギー転換、電気自動車の充電ステーション準備などCO2削減を図っている。枝詰めによる剪定を徹底したことから、大雪による枝折れが少なくなり、樹冠下の芝生の裸地化も減っている。マツは7千本程あり、マツ枯れを予防する地上散布は近隣環境への影響を配慮し樹幹注入に切り替え、剪定と根の生育促進に力を入れている」とご挨拶がありました。

 

公益社団法人ゴルフ緑化促進会 桜井副理事長

公益社団法人ゴルフ緑化促進会 桜井副理事長

日高カントリークラブ 高橋代表取締役

日高カントリークラブ 高橋代表取締役


 

東日本地区の座学風景

座学の様子

座学の最初の講義は「サクラ類など広葉樹の管理」について、和田博幸氏(公益財団法人日本花の会主任研究員)から、「樹木を取り巻く環境」、「日本の春を彩るサクラの風景」、「サクラ類の樹勢衰退の要因」「樹木の診断」「樹木を元気で安全なものにする」をわかりやすく解説していただきました。

サクラ類が好む生育環境は、日当たりが良く、水はけがよく適度に湿り気があり、肥沃な場所。樹勢衰退の主因は、てんぐ巣病、コスカシバなどの病虫害、過密な植栽、不適切な位置での剪定など、とくに大枝の切除は要注意と強調されました。


2番目の講義は「剪定枝・伐採木のリサイクル」について、三戸久美子氏(樹木医・NPO法人樹木生態研究会)から、「廃棄物の分類」、「バイオマス利用と地域活性化の因果関係」、「ゴルフ場で可能なマテリアルリサイクルとサーマルリサイクル」、「リサイクルで考えたいこと」を平易に説明していただきました。

剪定枝等をゴミではなく資源として利用する考え方をきちんと役所に説明し、処理方法を確認することが大切である。ゴミ処理には発展性がない。ゴルフ場を取り巻く周辺の状況を見極め、耕種農家が多ければ堆肥の継続利用が可能となる。どういう用途が考えられるか、わずかでも利益を上げて持続できる、リサイクルを通じた地域貢献の道を拓けないかを考える。薪ストーブの燃料、薪を燃料にお風呂を沸かす副次効果を見いだす。例えば、ゴルファーとともに資源となる木材を育てている、その過程で生物多様性を保全しているという発想を持つことが大切である。ゴルフ場は放置された里山に比べると遙かに高い生物多様性保全の貢献度が評価できるので、木質資源のリサイクルは社会から理解を得る格好のテーマと指摘されました。

 

関連して、日高カントリークラブのリサイクルに取り組んでいる環境コンサルタント・加治佐 氏より、資源循環の現状等の説明を受けました。


3番目の講義は、「ゴルフ場を想定した松くい虫被害対策」をテーマに、中村克典氏(森林総合研究所東北支所生物被害研究グループ長)から、「松くい虫被害とその防除手法」、「ゴルフ場のマツの松くい虫対策」、「常識的な防除を着実に」という構成による解説をしていただきました。

松くい虫被害対策において大切なことは、先例のない取り組みや画期的な新技術をあれこれ試すことではなく、常識的な防除手法を着実に実施すること、そして、これを「当たり前のこと」にしているのは、実務担当者の方々の正確な知識に基づく的確・冷静な判断と高度な技術レベルなのである、と結ばれました。

 

3講義通した13時20分過ぎまで長時間の座学となりました。

 

公益財団法人日本花の会 和田主任研究員

公益財団法人日本花の会 和田主任研究員

樹木生態研究会 三戸久美子 氏

NPO法人樹木生態研究会 三戸久美子 氏


加治佐 氏

加治佐 氏

(独)森林総合研究所東北支所 中村グループ長

(独)森林総合研究所東北支所 中村グループ長


 

クラブ食堂での遅い昼食の後、クラブハウスから南コース9番ホールと西コース9番ホールの間の実習場所へ移動しました。

 

初めに無煙炭化器を使い枯れ竹の炭をつくる手順を全員で見学しました。

その後、参加者は4グループに分かれ各々20分程度で、1)伐倒くん蒸(薬剤)、2)樹幹注入(ナラ枯れ予防)、B土壌灌注(マツ枯れ予防)、C樹幹注入(マツ枯れ予防)の実習メニューを同時進行で進めました。

あわせて、あらかじめゴルフ場の被害材から取り出したマツノマダラカミキリ幼虫、材内に作られた蛹室(ようしつ)や成虫の脱出孔の確認をしました。


公益社団法人ゴルフ緑化促進会 桜井副理事長

実習の様子

茨城ゴルフ倶楽部 倉持総支配人

無煙炭化器を使った枯れ竹の炭づくり


マツ材線虫予防の樹幹注入実習

1)伐倒くん蒸

マツ材線虫予防の土壌灌注実習

2)樹幹注入(ナラ枯れ予防)


ボーベリア菌不織布製剤による駆除実習

3)土壌灌注

マツノマダラカミキリ駆除の伐倒くん蒸の実習

4)樹幹注入(マツ枯れ予防)


 

一般社団法人日本ゴルフ場事業協会 大石順一専務理事

一般社団法人日本ゴルフ場事業協会 大石専務理事

 実習終了後、再びコンペルームへ戻り、NGK大石専務理事より閉会のご挨拶をいただきました。

「本日の座学と実習の内容は、樹木をどのように管理し、そのことが地球温暖化防止にどう役立つのか、参加者皆様のゴルフ場における日頃の樹木管理を進める上で参考になるものと確信している。

今やペットボトルからフリースを生み出す時代、伐採木や刈草はゴミ、これをコンポストに、バイオマス燃料に資源循環させることが大きな課題である。真庭市の銘建工業(株)は製材過程から発生する木屑を木質ボイラー燃料用のペレットに加工すると共に、「木質バイオマス発電」の燃料としている。この試みが認められ、真庭市が「木質バイオマス発電所」を建設し、市内22,000世帯分の電力需要に応えようとしている。

ゴルフ場のマイナス・イメージを切り替えるために、地域経済にいかに役立てられるか、木質バイオマス利用の試みは大きなヒントになる」と話されました。


今回のセミナーには東日本地区から約70名の皆様のご参加をいただき、そのうちゴルフ場スタッフは約6割近くを占め、午後4時過ぎまで熱心に研修されました。


実習の実施にあたり、サンケイ化学(株)・石原バイオサイエンス(株)・ゾエティス・ジャパン(株)の各社より資材提供と専門職員の派遣にご協力をいただきました。

なお、当センターは、本セミナーの企画・運営に協力致しました。

 

リンク 平成26年度 東日本地区の開催案内とプログラム

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