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−平成19年度「樹木と緑化の総合技術講座」テキストより一部抜粋−
 
 ●目次
ページ
講座名
講師
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植栽基盤の調査・判定・整備工法について

長谷川秀三(ジオグリーンテック株式会社代表取締役)

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樹木の主な病害と対策

窪野高徳(独立行政法人森林総合研究所森林微生物研究領域森林病理研究室長)

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樹木の虫害診断と対策 牧野俊一(独立行政法人森林総合研究所森林昆虫研究領域長)

■ 植栽基盤の調査・判定・整備工法について
  講師:長谷川秀三(ジオグリーンテック株式会社代表取締役)
   
   近年、単なる「緑の量的な確保」だけではなく「質的に充実した緑」が求められるようになった。質の高い緑化を行うためには、「緑を支える基盤である土壌」が重要な役割を果たしていることが再認識され、「植栽基盤整備」という専門用語が定着してきた。植栽基盤を理解し、きちんとした品質の緑を造り守り育てる人材を養成するために、「植栽基盤診断士」の資格認定も行われるようになった。今後「重要な植栽や緑の管理」に樹木医とともに大切な資格となっていくと考えられる。
 また、植栽に良質な客土を容易に購入できた時代は過ぎ、客土を購入せずに現場の土を改良して利用してくようになってきた。これは、山からの客土採掘が自然破壊を引き起こすうえ、入れ替えた残土が建設廃材となるため、ゼロエミッション(現場から出る廃棄物を限りなくゼロに近づける考え方)に反するという背景もあり、この面からも植栽地の植栽基盤土そのものを改良整備して緑化していくようになってきた。
 植栽基盤の整備については調査法を含め、日本造園学会の「植栽基盤整備マニュアル改訂版(ランドスケープ研究63(3)2000)」が出るとともに、建設大臣官房官庁営繕部監修の「建築工事共通仕様書(1997.6)、同建築工事監理指針下巻(1998.5)」、「日本道路公団造園設計要領(改訂版、1994.9)」等の各公共団体の仕様書や、「植栽基盤整備技術マニュアル(案)(日本緑化センター、1999.1)」等で取り扱われるようになって普及してきたが、実際には、植栽技術者の意識の改革は十分とはいいがたい。難しい問題と思われているためもある。植栽基盤(土壌)に起因する樹木の生育不良の原因の中で、最も多く見られるのが、根の発達を阻害する土の「硬すぎ」と根腐れを起こす土壌の「透水性不良」である。この二つが改善されればほとんどの樹木は良好に生育する。そのため、ここでは主にこの二つについて調査方法・評価方法・整備方法について解説する。
   
 
図7目標となる植栽基盤の模式断面図
 
図7 目標となる植栽基盤の模式断面図
   
 

■ 樹木の主な病害と対策
 講師:窪野高徳(独立行政法人森林総合研究所森林微生物研究領域森林病理研究室長)
   
 
病気とは
 播き付けられた種子、あるいは挿し付けられた挿し穂が、正常に発芽・発根して育ち、緑地に植栽されてからも年々樹幹を緑に保って順調に生育し、また開花・結実していれば、その苗木あるいは樹木は健全であるといえよう。ところが、この健全な樹木が何らかの原因によって、色調・形態あるいは生育状態に外見的な異常を現したとき、これを病気という。昆虫の食害や強風などによる機械的損傷は障害といって、病気とは区別される。
病気により栽培・利用上の目的が損なわれたとき、すなわち経済的あるいは観賞的価値を減じたとき、これを被害といい、病気による被害を病害という。つまり病気は樹木の側にたった言葉であり、病害は樹木を利用する人間の側からみた言葉である。
 タケ・ササ類の開花のように、植物にとっては正常な開花・結実という現象が、開花後に引き続いて起きる枯死のために、人間の側からは病害として認識され、開花病という病名が付けられ、竹林の恢復対策が研究される例がある。このような病気をとくに実用病と呼ぶ。
 逆に帯化や白化あるいは斑竹など、樹木にとっては病的現象であるのに、人間がその利用価値を認めて、園芸品種として重用する場合もある。また、病原菌の子実体の中にも、装飾品として、あるいは薬用として利用されるものもあり、近年はそれらの人工栽培も試みられている。
   
  窪野高徳先生講義風景 窪野高徳先生

■ 樹木の虫害診断と対策 講師:牧野俊一(独立行政法人森林総合研究所森林昆虫研究領域長)
   
   公園、庭園などに植えられている樹木の葉が変色したり、枝、幹部から樹液や木屑が排出され、樹木の異常に気づいたときは、その原因は虫害か、病害か、生理的障害か、それともこれらの複合害によるものかを明らかにする必要がある。この原因が虫害である場合は、その害虫の名前(種の同定という)を明らかにし、それに基づき害虫の生態を知ることにより、適切な防除法を探すことになる。ここで対象とする緑化樹木は種類が多く、そのため、これらに寄生する害虫の種類も多様である。これらは昆虫綱やクモ形綱などの広範囲にわたり、多く目(もく)<分類学上の単位>におよぶことから、種名の同定は容易ではない。害虫の種名を同定するための各分野の文献を調べ、形態上の特徴などから種の比較検討をすることになる。また、必要に応じて専門家に依頼しなければならない場合もある。緑化樹木で対象とする害虫の主な目は次のように分けられる。
昆虫綱・・・アザミウマ目、カメムシ(半翅)目、チョウ(鱗翅)目、コウチュウ(鞘翅)目、ハチ(膜翅)目
         ハエ(双翅)目、シロアリ目
クモ形綱・・・ダニ目
   
 
 

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