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樹木は暑さを感じる

(出所:TREES FEEL THE HEAT by MIKE MAY, p.24〜27, WINTER 2001 American Forests)

 

  進行中の変化に加えて、科学者が一番懸念しているのは未来のことである。長期予報は、二酸化炭素や地球の周りを回る循環パターン等を考慮に入れる数学モデルを使っている。結局、色々なモデルがあって多種多様な予報を生み出している。しかしながら、デューク大学の森林生態学者ジェームス・クラーク氏は次のように語る。「気温の評価方法を見い出す技術という点で、気象学界側から科学者に対する信頼度が高まって来ている。」

 それでも、科学者は一連の可能性を示すことができるに過ぎない。地球の気象変化に関するホワイトハウス・イニシアチブによれば「最新の気象モデルは、次の世紀に地球の気温が摂氏で約35゜上昇するであろうと予測している。」とのことである。全国査定統合チーム:National Assessment Synthesis Team は、気温は平均して5〜10゜C上昇する可能性があるとの報告を発表しようとしているところである。地域によっては他より暑い所もあるであろうが、ピークの気温が大きく揺れ動くことはありそうにない。ピークの気温を論じるにあたって、マローン氏はこう語る。「数字が数度以上変わることはないと思う。平均より2〜3度変動がある程度ではないか。」

 都市では、すでにかなりの温暖化を経験している。都市の夏期の気温は、周辺地域に較べて6〜8゜C上昇することもある。建物や舗装が大量の熱を吸収するために、このような都市のヒートアイランドが生じるのである。なお都市では、木は少なく日除けや蒸発散にも限りがある。植物は主に蒸散作用によって熱を使い切るのである。更に国立ローレンス・バークレイ研究所のヒートアイランドグループの Hashem Akbari氏は次のように語る。「建物の日除けをすることで木一本でも夏の間使われるエアコンを減らすことができる。」

 二酸化炭素が蓄積するにつれて、降水量パターンも変わるであろう。大部分のモデルが、雨量が5〜20%増加すると予測している。気温が上昇したように、雨量の増加も今に始まったことではない。地球の気候変動に関するホワイトハウス・イニシアチブによれば「今世紀の初めから、合衆国における降水量は約6%増え、同時に一日当り2インチ(約5p)以上の豪雨の頻度が20%増加した」ということである。にもかかわらず、多くのモデルが、特に南東部のような特定の地域における干ばつ状態を予測している。雨が多過ぎるか少な過ぎるか、いずれにしても、森林をおびやかすことになる。湿った状況は燃料の売り込みにつながるかもしれないし、干ばつは火災を引き起こしたり、樹木を枯死させたりし得る。

 この変動する気候は、樹木にどのような影響を与えるのであろうか?二酸化炭素を使って糖分を作ることができるので、二酸化炭素が増えるということは植物の成長を促進するということになり得る。同様に、生物学的プロセスの大部分は、気温の上昇に従って加速するので未来の気候は樹木の成長を早めることができるということになる。科学者は部屋に幼樹を入れて、二酸化炭素の量を増やすということをやっているが、確かに木の成長は早い。しかしながら、クラーク氏は「植物は順応して、早く成長した分は、短期間で帳消しになることも起こり得る」と言う。

 現実の森林に対する二酸化炭素の影響について実験するために、デューク大学の研究者らは、あるテーダマツ林でこのガスを50%増やした。木の成長率は数年間増加し、続いて次第に減っていった。研究者の一人ラム・オーランはこう付け加える。「このような短期間に得られる反応の一体どこまでが我々の実験結果と言えるのか完全に確信しているわけではない。二酸化炭素の気圧を上げて、システムを多少ひねって、反応を観察する。
しかし、こうした変化が穏やかだったら、同じような反応の仕方はしなかったかもしれない。」「どの程度の規模で森林が気候と共に変化するか予測するために、科学者はモデルを使う。ナショナル・アセスメント森林部門の生物学的多様性委員会は、将来的気候変動に関する7つの異なるシナリオの間に共通する傾向を捜し求めた。委員会のメンバーであり生物気候学者であるロナルド・ニールソンは次のように語る。「最も一致していることは、高い方の標高の境界線と北部境界線である森林の Cold-limited 境界線が、一様に高い標高あるいは北の方に移っている。」例えば、北東部におけるカバノキとカエデの森林はカナダの方に動いているようだし、南東部のマツ林は、カシノキとヒッコリーの生息地に割り込みながら北へ動いて行くのかもしれない。

 一体どの程度の速さでこうしたことが起こるのか誰も知らない。森林が移動するためには樹木は移住しなければならない。アパラチア山脈研究所の所長ルイ・Pitelkaは、「移住の最大比率に関する非常に適切な情報はない。」樹木の中には他のより早く移住するものも確かにあるだろう。特定の土壌条件を必要として移住が制限されるものもあるだろう。あるいは、移動するのに特別な授粉生物を必要とするものもあるだろう。森林の行く先に立ちはだかるものをより正確に予言するには、こうした情報プラスそれ以上のものが求められる。オーラン氏も次のように語っている。「森林の変化について正確な予言をすることに退職の是非を賭けるような人がいたら驚きである。」

 どの程度の速さで森林が移動するかは、森林火災も含めて、種が北へ移動する機会を加速させるような障害次第でもある。ニールソン氏は「西部において我々が行ったほとんど全ての時間依存のシュミレーションで、火災の大きな増加を見ている」と語る。森林の害虫も障害になる可能性がある。フォレスト・サービスの環境コンサルタントであるボブ・ミックラーはこう語る。「いくつかの昆虫モデルは、マイマイガの分布範囲がメイン州を通って北上し、カナダの東海岸の方まで広がることを示している。」

 昆虫の中にはすでに分布範囲を広げているものもいる。オースチン市にあるテキサス大学のカミユ・パルムザン氏と彼女の同僚は、ヨーロッパの非移住性の蝶35種について調査し、半分以上が、前世紀の間に北へ分布範囲を移したことを発見した。動物の間では、更なる移動が確実に待ち構えている。

つづく


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